2010年06月29日

マッサージと痛み

筋が強い力で圧された時には、
力が強くなれば痛みを感じることもあります。
しかし、痛みの強さは力の強さと比例しているわけでもありませんし、
圧によって筋が損傷したのを反映していると言うわけでもありません


痛みは、力がある水準以上になった時に突然感じられます。
この感じるか感じないかの境界の刺激レベルを『閾値 いきち』と言います

この閾値のレベルは、
人により筋の状態(コンディション)によって変わります

弱い力で圧されただけでも痛みとして感じる、痛み感受性の強い人もいれば、
強い力で圧されても痛いとは感じなかったり気持ちよいと感じる人もいます。  ※1

筋の緊張が強く短縮した筋を圧されると痛みを感じやすいが、
マッサージを通じて筋の緊張・短縮が緩和されると、
同じ力で圧し続けてても、急に痛みが弱まったり感じなくなったりします
。   ※2
(そこに、ディープ・マッサージの利点があるわけです。)
こうした現象を見るにつけ、
緊張・短縮した筋をマッサージによって圧した時の痛みは、
筋の損傷を意味するのではないことがうかがわれ、
一つの考え方としては
むしろ筋組織への血液循環不良によって酸素不足が起こり
筋の感覚神経が興奮状態になって
痛みの閾値が低下した(敏感になった)、
ことが原因ではないかと考えています。
(損傷が起きて痛いのだったら、マッサージ中ずっと痛いですし、
急性炎症が起こって痛みが憎悪するおそれが高くなります。)

深部の筋組織にまで圧を入れたいが、
それによって痛みが出ることはできるだけ避けたい。
非常に悩ましいことではありますが、
相手の痛みに対する感受性などをみながら
痛みを我慢することを強いることは避けるのが原則であろうと考えます。
また、上述したように痛いからと言って
力づくで揉んでいるわけではないことをは理解して頂きたい
のです。

当然のことですが、へたくそなのに力に頼って筋を強もみすることは、
痛くて効果がないだけでなく、
逆に筋の張り(緊張)が強くなったり、損傷させるおそれがある
ので、
マッサージする人もされる人も注意した方がいいでしょう。


※1 人によって痛みを感じるマッサージの圧レベルが異なる

痛みを感じる刺激レベルが人によって違うのは、
その人のその時点での筋のコンディションの違いだけが理由ではない。
伝えられた神経情報(感覚)を痛みとして認識するのは大脳であり、
大脳が「痛み情報」を修飾したり強めたり弱めたりするので、
大脳の違いが痛みを感じる刺激レベルの違いとなる。
生育歴・経験などの記憶、今置かれている境遇、心理的な状態や情動などによって、
痛みに対する感受性は人によって異なるし、
変化もする
ことも考慮しなければならない。
自分以外の人は、自分とは違う。
一人ひとり別人格を持っている。

(同じことを同じように感じるとは限らない)


※2 マッサージの最中に、急に痛みが弱まったり感じなくなったりする

正に痛みが急激(長くても数秒間)に変化をする。
聞くと、「その瞬間」がわかるくらい変化したタイミングを自覚できるようだが、
マッサージしている方としても「その瞬間」に私の手の下で
筋の緊張(硬さ)が解消して柔らかな感触になるのが感じられる。
このような短時間の変化が起こるからには、
神経系の反射的な反応が関わっているとしか考えられない


運動神経抑制された(筋を緊張させる指令の減衰または消失)か?
痛覚伝導または伝達がどこかで阻害されたか?
あるいはその両方が起こったのか?
私(マッサージ施術者)の感じる被施術者の筋の弛緩(リラクゼーション)からすると、
運動神経の抑制は必ずあると思っているのだが。

また、自律神経の作用も関係しているとも思う。


元の記事:
 『感覚派アスレティックトレーナー 身体と会話する日々』2009年1月10日
 『治療室ボディ・インスピレーション 癒す体・鍛える体』2009年10月19日
 


同じカテゴリー(施術について(考え方と実際))の記事画像
筋肉へのマッサージ
同じカテゴリー(施術について(考え方と実際))の記事
 野球肩の治療 (2011-07-03 21:38)
 筋肉へのマッサージ (2010-06-29 19:39)

上の画像に書かれている文字を入力して下さい
 
<ご注意>
書き込まれた内容は公開され、ブログの持ち主だけが削除できます。

削除
マッサージと痛み
    コメント(0)